彼は魅惑のバレリーノ

「お風呂先にどうぞ。
そこにあるシャンプーとか適当に使って。」

「ありがとう。」

湯気の中で、今日の出来事がぐるぐる頭を回る。
まさか、こんなことになるなんて。

……これ、夢じゃない?
いや、夢じゃない。
でも心臓がずっと忙しい。

わかってる。
これはただの親切心。
それでも、落ち着けるわけがない。

髪をタオルで拭きながらリビングに戻る。

「お風呂ありがとう。」

「ドライヤーは?」

「あー、大丈夫。いつもタオルで自然乾燥だから。」

「ダメダメ。
ここ、おいで。」

そう言って、手を取られた。

その一瞬で、胸がぎゅっと縮まる。
指先が温かい。
自然に触れてくるの、反則。

ソファの前の座布団に座らされる。
柊くんは何の迷いもなくドライヤーを手に取った。

ふわりと髪を持ち上げられる。
温かい風が首筋を撫でて、思わず息が詰まる。

近い。
近すぎる。
こんな距離、普通に保てる人いる?

「あつくない?」

耳元で落ち着いた声がする。
その声が、くすぐったくて、甘い。

「だ、大丈夫。」

髪をすくう指が優しくて、
触れられるたびに心臓が跳ねる。

ああもう……
この天然タラシ。

何も考えてないみたいな顔で、
こんな距離で優しくされたら、
好きになるに決まってる。