彼は魅惑のバレリーノ

「とりあえず、カフェでもいかない? 奢るよ。」

「いいね。俺もコーヒー飲みたい。」

二人で部屋を出て、近くのカフェへ向かった。

「私これ食べたいなー。パンケーキ。」

「いいじゃん。俺はコーヒーで。」

店員さんに注文を済ませて席に戻る。
ふと周りを見れば——

わかる。
わかりますよ。

みんなの視線が、彼に向いていることくらい。

見ちゃうよね。
綺麗だし、背も高いし、雰囲気もいいし。

でも。

「ねぇ、あれ彼女かな?」

「え?釣り合ってなくない?」

「ってかイケメン!声かけちゃう??」

ひそひそ声が、
まるで矢みたいに刺さる。

胸がぎゅっと縮む。
居心地が悪くて、視線を落とす。

そんなとき。

「一華さん。大丈夫?疲れた?」

柊くんが、
周囲の声なんて全く気にしていないみたいに、
まっすぐこちらを見てくる。

その目が優しくて、
心配そうで、
私の表情をちゃんと見てくれていて。

胸の奥がじんわり温かくなる。

「大丈夫!」

そう明るく答えると
そっと、
私の前に置かれたパンケーキの皿を近づけてくれた。