彼は魅惑のバレリーノ

「あ、危なっ。
大丈夫?」

「ごめん。立ちくらみ。」

「顔真っ青だよ。
ちょっと抱えるよ。」

「え、まって!」

言い終わるより早く、
スッと膝の下に腕が入り——

お、お姫様抱っこ……!?

「鍵ある?」

「バッグの内側のポケットに。」

「勝手にあけるよ。」

落とさないようにしっかり抱えたまま、
器用にバッグを開けて鍵を取り出す。

カチャリ、と鍵が回る音。

「失礼します。」

「ど、どうぞー…。」

部屋に入った瞬間——

「待って、なにこれ。」

「ちょっと散らかってて…。」

「ちょっとじゃないでしょ!」

床に散乱した紙、スケッチ、資料。
自分でも見慣れた光景だけど、
他人に見られると急に恥ずかしい。

柊くんはため息をつきながらも、
そっとソファに私を下ろしてくれた。

「とりあえずゆっくりしてて。
大丈夫?吐きそう?」

「大丈夫。目がまわる。」

「じゃあ目を閉じて。」

そう言って、
スッと前髪を撫でられた。

その手が、あったかい。
優しさが指先から伝わってくるみたいで、
胸の奥がじんわり熱くなる。