彼は魅惑のバレリーノ


「仕事忙しいの?」

「うん、柊くんのおかげでスランプから脱したら仕事が舞い込んできて。」

「それ俺のせい?」

「ううん、嬉しいの。だから頑張んなきゃって。」

「そっか。」

「でも、さすがに疲れたー。」

ぐーっと伸びをする。
車の揺れが心地よくて、まぶたが落ちそうになる。
だめだ、寝たら…なんか恥ずかしい。

「はい、ついたよ。」

「ありがとう!わざわざ。」

「これ、軽く食べられるものも買ってきたから。」

「え…いいのに。ありがとう。」

車を降りると、夜風がひんやりと頬に触れた。
柊くんは車の外まで出てきて、軽く手を振ってくれる。

「じゃあ、気をつけて。」

「うん。本当にありがとう。」

そう言ってアパートの入口へ歩き出した——その瞬間。

ふわり、と視界が揺れた。

あ、まずい。

足元が遠くなる。
膝が抜けるように力が入らない。

倒れる——そう思ったのに。

い、痛くない。