彼は魅惑のバレリーノ

毎週金曜日。
柊くんをモデルに絵を描くようになって、もう一ヶ月。

気づけば画材道具も増えて、
置き場所まで用意してくれて、
絵を描いたあとは夕飯を一緒に食べて、
遅くなると車で家まで送ってくれるようになった。

……や、優しい。
優しすぎる。

そして今日も楽しみにしていた金曜日——のはずだったけど。

「だめだ。お、終わらない。」

「大丈夫?手伝うことある?」

亜季が心配そうに覗き込んでくれる。

「いや…全部私に頼んでくれたものだから。」

そう、スランプを脱したら仕事が一気に舞い込んできた。
嬉しいけど、それにしたって急ぎの案件が複数も重なるなんて。

あー……今日は行けないや。

柊くんにメッセージを送る。

『今日は仕事が終わらなくて行けないです、ごめんなさい。』

すぐに返ってきたのは、

『わかった。』

そのあとに、
ちょこんと座った猫が「がんばれ」と言っている応援スタンプ。

それだけで、頬がゆるむ。

会えないのは残念なのに、
そのスタンプが胸の奥をふわっと温かくしてくれる。

よし、がんばろう。