彼は魅惑のバレリーノ


思わずリスのスノードームを買ってしまった。
まあ、可愛いからよしとしよう。
袋の中で小さく揺れるスノードームが、なんだか胸の奥まで温かくしてくれる。

「帰ろっか。」

「はい。」

車に乗り込むと、外はほんのり夕暮れ色に染まり始めていた。
フロントガラス越しに見える街の灯りが、少しずつ滲んでいく。
静かな車内に、さっきまでの会話の余韻だけがふわりと残っている。

「ここで平気?」

「はい。今日はありがとうございました。」

近くのコンビニで降ろしてもらい、軽く頭を下げる。
本当はもう少しだけ、この空気の中にいたかった。

「ううん、俺のほうこそ誘ってくれてありがとう。
楽しかったです。」

ふわっと笑う彼。
その笑顔が、夕暮れの光に溶けてやわらかく見える。

まだ出会って間もないのに。
こんなにさよならが恋しくなるなんて、どうしてだろう。

車のドアが閉まる音が、胸の奥にそっと落ちる。
離れていくテールランプを見つめながら、
心のどこかが、きゅっと引かれるように痛くて、
でもその痛みさえ、少し甘い。