彼は魅惑のバレリーノ

「あ、これ柊くんに似てるかも。」

「どれ?」

彼が覗き込むように近づいてきて、ふっと息が止まる。
肩が触れそうで触れない、そのわずかな隙間がくすぐったい。


「ユキヒョウ。」

私が指差した水筒を、柊くんは丁寧に手に取る。
白い指先が絵柄をなぞるたび、彼の横顔に落ちる影が揺れる。

「…俺こんな目つき悪い?」

「そうじゃなくてさ。
ユキヒョウってさ、足場の悪い山岳地帯で生きてるんだって。
標高が高くて風が強かったり、斜面が急だったり…すごく大変な場所。」

「へぇ。」

水筒を持ったまま、彼は視線だけこちらに向ける。
その目が、さっきよりもずっと近い。


「だからね、機敏じゃないと生きていけないんだって。
ごつごつした斜面を、すごいスピードと跳躍で駆けるらしいの。
それが華麗で、かっこいいんだって。」

言いながら、私は自然と彼の姿を思い浮かべていた。
あの一瞬の跳躍。
空気を切り裂くような軽さと、着地の静けさ。
そして、凛とした立ち姿。

「だから何となく…見た目も、飛躍力も、立ち振る舞いも…似てる気がするなって。」

柊くんは一瞬だけ目を伏せ、そしてゆっくり笑った。
その笑みは、どこか照れていて、どこか嬉しそう。

「…そんなふうに言われたら、普通に照れるよ。」

その声は少しだけ甘さを含んでいる。