彼は魅惑のバレリーノ

「そういうこと、誰にでも言うの?」

「うーん、どうだろうね。」

彼は視線を外し、曖昧に笑った。
その横顔が妙に大人びて見えて、胸の奥がざわつく。

……こういうの、意識したら負けだ。
自分にそう言い聞かせて、余計な感情を押し込める。

「さて、車に戻ろうか。」

「そうだね。」

夕方の風が少し冷たくて、並んで歩く距離がやけに近く感じた。
車に乗り込むと、車内の温かい空気がふっと頬を撫でる。

エンジンをかけようとしたところで、

「少し寄り道してもいい?」

彼がハンドルに手を置いたまま、こちらをちらりと見る。
その目が、さっきより少しだけ真剣で、胸がまたざわつく。

「うん。どこ行くの?」

「お気に入りの場所。付き合ってくれる?」

「いいよ。」

そう答えると、彼はほっとしたように微笑んだ。
その笑顔が、なんだかずるい。

車はゆっくりと走り出す。
窓の外の景色が流れていくのに、胸の中だけは落ち着かないままだ。