彼は魅惑のバレリーノ

「い、嫌じゃないの! び、びっくりして。」

声が裏返ってしまい、思わず自分で恥ずかしくなる。
けれど柊くんは、そんな私を面白がるように目を細めた。

「そっか。ならこれからも呼ばせてもらおう。
いい?一華さん。」

ふふっと、喉の奥で笑う。
その笑みは柔らかいのに、どこか無自覚に人をドキッとさせる。

この無自覚系イケメンが……。

胸の奥がくーっと熱くなって、思わず足先がもぞもぞ動く。
悶えているのを悟られたくなくて、桜フラッペのカップをぎゅっと握った。

「もちろん。」

なんとか平静を装って返すと、
柊くんは満足したようにストローをくわえ、
桜のフラッペをひと口飲んだ。

「一華さんってさ。」

「ん?」

名前を呼ばれるたびに、胸の奥がくすぐったくなる。
柊くんは少しだけ体をこちらに向けた。

「呼ぶと、ちょっと嬉しそうにするよね。」

「えっ……!」

心臓が跳ねた。
図星すぎて、言葉が喉につかえる。

「別に悪い意味じゃないよ。
なんか……かわいいなって思って。」

さらっと言う。
本当に、なにげもなく。

春の風が吹き抜けて、桜の花びらが二人の間をひらりと舞った。