彼は魅惑のバレリーノ

食事を終えて、私が財布を出そうとした瞬間、
柊くんがすっと一歩前に出た。

「カードで。」

店員さんとスマートにやり取りする姿が、妙に様になっている。

支払いを終えた彼に、私は思わず詰め寄った。

「え!? 私が奢るって言ったじゃん!」

「いいよ。チケット代あるし。」

「でも、それもらったものだし!
あと…モデルは?」

「それは気が済むまで手伝うよ。
俺は普段通りにしてるだけだしさ。」

「優しい。」

「それはどうも。」

軽く肩をすくめる仕草が、なんだか大人っぽい。

「それよりどうする?
どっか行く? 帰る?」

まだ15時前。
帰るには、ちょっと惜しい時間。

「うーん。」

「じゃあ少し散歩しよう。
ちょうど桜が咲いてるかも。」

「いいね!」

「久々のデートなんでしょ?
このまま終わるのは寂しいでしょ?」

いたずらっぽく笑うその顔に、胸がきゅっとなる。

「…お気遣いありがとう。」

そう言って、二人で歩き出す。
外に出ると、春の風がふわりと頬を撫でた。
隣を歩く彼の歩幅に、自然と自分の歩幅が合っていく。