彼は魅惑のバレリーノ

「一番長く見てた絵だよね。」

「あ、そうかも。ごめん!」

思わず謝ると、柊くんが少しだけ目を丸くする。

「なんで謝るの。」

「だって…私ばっかり夢中になってたし。」

「いいじゃん。夢中になれるの、いいことだよ。」

そう言って、彼は水を一口飲む。
その仕草が妙に落ち着いていて、なんだか大人っぽい。

「でも、退屈だったら悪いなって。」

「退屈じゃなかったよ。
むしろ——」

「むしろ?」

「君がどんな絵に反応するのか見るの、ちょっと面白かった。」

「えっ、見てたの?」

「見てたよ。ずっと前のめりで見てたから。」

「うわ…恥ずかしい。」

「いいじゃん。そういうの、好きだよ。」

さらっと言う。
ほんと、この人は時々爆弾を落としてくる。

「……またずるいこと言う。」

「言ってないよ。事実。」

彼が軽く笑う。
その笑顔が、さっき見たどの絵よりも柔らかくて、胸の奥がじんわり温かくなる。