彼は魅惑のバレリーノ


「ご、ごめんね! 私のペースでゆっくり見ちゃって。」

思わず口に出す。

「いや、全然。俺もゆっくり見れて楽しかったよ。
とりあえずお昼行く?」

気づけば正午だ。

「そうだね。見終わったし、行こうか。」

私たちは歩いて近くのお店に入る。

席につくなり、私はぺこりと頭を下げた。

「本当すみません。」

「え? なにが?」

「いや、本当…絵に夢中で存在忘れてた。」

「それは、ひどい。」

クスッと笑う。

「た、退屈だった?」

「いや…面白かったよ。
同じテーマでも描く人が違うと全く別物で新鮮だった。」

「そ、そうなんだよね!!
すごいなって思うよね。」

「うん。」

「ねぇ!どの絵が気になった!?」

「そうだなぁ…桜の花びらが散る中で人魚が月見てる絵かな。
水面に映ってるのは人の足になっててさ。
人魚姫の童話を思い出したよ。」

「あれね! 色使いも上手だったよね。」

うんうんと頷く。