彼は魅惑のバレリーノ


「レタスこっち盛り付けて。」

「ほい!
ってか、ローストビーフって手作り!?
作れるの? お店とかで食べるんじゃないの?」

「意外と簡単だよ。
表面焼いてから、あとはジップロックに入れて、沸かしたお湯に放置だから。」

「はぁ。家事力高いなぁ。」

「それはどうも。
ご飯もあるよ。食べる?
あとコーンスープ。」

「食べる!」

テーブルに料理が並ぶ。
ローストビーフの香りがふわっと広がって、
なんだか“家庭の匂い”がした。

二人で向かい合って座ると、
不思議な関係だな、とふと思う。
まさか美術館に一緒に行くことになるなんて。
ちらっと柊くんを見る。

「なに?」

「美味しいです!
こんな綺麗な人が作ったご飯食べれて最高!」

「……本当変な人だよね。」

「よく言われる。」

あははと笑うと、
柊くんはスプーンを置いて、少しだけ目を細めた。

「でも、周りにいないタイプで、新鮮だな。」

「それは…どうも?」

褒めてないよな?
とりあえずお礼を言ってみる。

柊くんは淡々とスープを口に運びながら、
ぽつりと続けた。

「……悪い意味じゃないよ。」

その一言が、
静かに胸の奥に落ちていく。