彼は魅惑のバレリーノ

「シャワー浴びてくる。」

「はーい。」

バスルームの扉が閉まる音がして、
部屋に静けさが戻る。

それにしても……広い家だよなぁ。
床も壁も綺麗にしてあって、
生活感が薄いのに、どこか温かい。

本当に男の一人暮らし……?
ん? そもそも一人暮らしか?

そんなことを考えていると、
シャワーの音が止まり、
ほどなくして彼が戻ってきた。

「お待たせ。今から作るよ。」

濡れた髪をタオルで押さえながら、
キッチンに向かう姿が妙に絵になる。

「私も手伝う。」

「ん。じゃあ、レタス洗って。」

「はい!」

水を流しながら、ふと気になっていたことを口にする。

「ねぇー。」

「なに?」

包丁の音が一定のリズムで響く。
その落ち着いた音が心地いい。

「一人暮らし?」

「うん、そう。」

「広くない!? この家。」

「……あー。祖母の家をリフォームしたんだよ。
練習部屋に。」

「へぇー。
もしかしてボンボン?」

「もっと他に言い方ないの?」

そう言いながらも、
ローストビーフを切る手つきは丁寧で、
怒っている感じはまったくない。

むしろ、口元が少しだけ緩んでいる。

「えっと……お金持っている方ですか?」

柊くんは包丁を置き、
軽く息を吐いた。

「……まあ、困らないくらいには。」