彼は魅惑のバレリーノ

「はい、終わり。
見ていい?」

「どうぞ。」

柊くんはタオルで首筋を軽く拭きながら、
私のスケッチブックを覗き込む。
汗で少し濡れた髪が頬にかかっていて、
その無防備さに胸がざわつく。

「なんか。だいぶ俺、美化されてない?」

「そんなことないよ!
私にはこんな風に見えております!
女神?いやそれは女になっちゃう?
男の神って…なに?男神?」

「ふふ、なんだそれ。」

表情がふっと崩れて笑う。
その笑顔が、思ったより柔らかい。

破壊力ありすぎ!
思わず鉛筆を持つと、柊くんがスケッチブックに手を伸ばす。
鉛筆を持つ私の手に触れそうな距離。

「もう、終わりだよ?」

「だめか。」

「ダメです。
ほら、夕飯食べよう。」

「うん。」

短く返事をして、
柊くんは立ち上がる。
その動きがしなやかで、
まるで舞台の一部みたいに自然。

私は画材をまとめる。
彼の後ろ姿を追って階段にあがった。