彼は魅惑のバレリーノ


「昔心を動かされた絵があって…
美術館巡りもたまにするんだ。」

「そうなんだ…
あ、美術館といえばさ。」

「ん?」

こてん、と首を傾げる。
サラッとした茶髪が肩に落ちて揺れた。
その仕草が妙に綺麗で、目が離せなくなる。

「チケットもらったんだ!
今週の日曜日までなんだけど…良かったら一枚どうぞ。」

スッと差し出すと、柊くんは立ち上がり、指先で丁寧に受け取る。

「へぇー。あ、これ行きたいと思ってたやつだ。
もう終わるのか。
いいの?もらって。」

チケットから顔を上げるその目は、どこか嬉しそうだった。

「うん、いいよ。」

「如月さんはもう見たの?」

「ううん、もう一枚あるから見に行こうかなって。」

「ふーん。
なら一緒に行けばよくない?」

あまりに自然に言われて、思考が止まる。

「え、え!?」

柊くんはこちらをちらっと見る。

「あ、もしかしたら一人でゆっくり見る派?
それなら無理せず。」

その言い方がまた優しい。
押しつけがましくなくて、
でもちゃんとこちらを気遣ってくれている。

「いや。行きます!
行きましょう!!」

勢いよく立ち上がると、


「そんなに?」

と、柊くんは小さく笑った。