彼は魅惑のバレリーノ

「でもそれを言ったら、如月さんの絵もすごかったよ。
あれこそプロって感じ。」

「うーん、どうだろう。
最近スランプで…。」

フォークを置きながら、私はぽつりとこぼした。

「私の絵を気に入ってくれてた人が、最近のはイマイチだって。
わかってるんだよね。
昔はさ、私が綺麗だって思うものを描いてたら、それが評価されてた。
でも社会人になってからは違う…難しいよね。」

はは、と笑ってみせる。
自分でも驚くくらい、弱音がするすると出てくる。

まだ知り合って間もない相手に。
しかも年下の彼に。

…なぜか話してしまう。

柊くんは静かに言った。

「芸術ってさ…正直、正解がないからわからなくなるよね。
この人はいいと思っても、他の人はそうは思わない。
大勢の人に刺さるって、難しい。」

淡々としているのに、言葉が妙に胸に落ちる。

「だけど一つ言えるのはさ、妥協しないことかな。
自分が自信を持って魅せられる。
それを大事にしてる。」

その横顔は、年下とは思えないほど落ち着いていて、
まつ毛の影が頬に落ちて、妙に大人びて見えた。

「へえー。すごい大人な回答。」

思わずそう言うと、柊くんは肩をすくめた。

「大人っていうか…ポリシーかな。」

その言い方がまた静かで、
胸の奥がじんわり温かくなる。