彼は魅惑のバレリーノ

柊 side

フランスに戻ってきた。
日本公演が終わったら行くつもりではあったが、思ったより早く話が決まってしまった。

一華さんが好きだ。
この先も、ずっと一緒にいたい。

でも、バレエダンサーとしての人生も同じくらい大事だ。

だから——
俺は欲張ることにした。

バレエダンサーとしての未来も、
一華さんとの未来も、
どちらも諦めるつもりはない。

俺の背中を押してくれた絵。
あのとき一華さんが描いてくれた一枚に、もう一度心を奪われた。
いや、絵だけじゃない。
一華さんそのものに惹かれている。

リスみたいにご飯を頬張るところも、
寝起きで眠そうに目をこする顔も、
絵を真剣に描く横顔も、
俺を映す瞳も——
全部が愛おしい。

離れるのは辛い。
それでも、毎日メールして、電話して、
二ヶ月に一度は必ず会いに行く。

バレエ以外で、こんなにも夢中になれるものに出会えるなんて思っていなかった。
ユキヒョウの描かれた水筒を握りしめる。

「柊、また日本に帰るのかい?」

「うん。彼女に会いにね。」

「まめだね〜クールガイ。彼女が恋しがってるのかい?」

同じ団員が口笛を吹く。

「いいや。俺の方が彼女にゾッコンなんだ。」

「へぇー。こんな王子様に愛されてる彼女はどんな子なんだい?」

「可愛い、俺だけのお姫様だよ。」

そう言って笑う。

もうすぐ会える。
一華さんは会わない間にどんどん綺麗になっていくから、変な虫がつかないか心配になる。
ちゃんとご飯食べてるかな。
休めてるかな。
仕事、頑張りすぎてないかな。

気づけば、いつでも彼女が心の片隅にいる。

はあ……早く会いたい。
会って、甘やかして、可愛がりたい。

そして——
俺は一華さんにちゃんと伝えたい。
この先のことを。