彼は魅惑のバレリーノ


席に向かうと——

「げ、なんでいるの?」

兄がそこにいた。

「未来の弟に呼ばれたからな。」

「それやめてよ。」

ふっと息を吐きながら、兄の隣に座る。

「なあ。」

「なに?」

「これ描いたのお前?」

兄がパンフレットをトントンと指で叩く。
海賊アルトと海の女神のイラスト。

「そうだよ。」

「へえー。良いもん描くな。」

素直に褒められて、逆に拍子抜けする。

「ありがとう。」

「あと、これもお前?」

ユキヒョウ海賊のキーホルダーを見せてくる。

「そうだけど……買ったの?」

「ああ。なんか愛着湧くな、これ。」

そう言って指で軽く回す兄。
その顔がちょっとだけ柔らかい。

そのとき——
ブーッと開演前の合図が鳴った。

「始まるな。」

「うん。」

胸がぎゅっと高鳴る。
いよいよ、柊くんの舞台が始まる。