彼は魅惑のバレリーノ

柊 side

数時間前。
練習室でストレッチをしながら、一華さんのことを思い出す。
今日は飲み会だと言っていた。
「近いから迎えはいらないよ」と笑っていたけれど……心配だ。

あの人は無防備すぎる。
自分がどれだけ可愛いか、まったくわかっていない。

それに——
一華さんの同期、深山さん。
初めて会ったときから感じていた。
あの視線は、間違いなく好意だ。

「……心配だな。」

ぽつりと呟く。

練習を早めに切り上げ、シャワーを浴びて私服に着替える。
飲み会の場所は聞いている。

行ってみよう。

車を近くに停めて店の前に向かうと、一華さんの姿が見えた。
だけど——誰だ、あいつ。

一華さんに馴れ馴れしく触れている。

許せない。

醜い嫉妬を悟られないように、焦りを押し殺して声をかける。
ふわふわした顔でこちらを見る一華さんが、あまりにも可愛すぎて、胸が苦しくなる。
こんなの、俺以外が見ていい顔じゃない。

だけど——
その手を掴んでいた相手は、一華さんの兄だった。
安堵と同時に、気が抜ける。

そして、言われた。

「なら公演終わったらどうするわけ? 捨てんの?」

その言葉に、思わず拳を握りしめていた。
大人気ない。でも、はっきり告げた。

『俺は……本気で一華さんが好きなんです。
彼女を、そう簡単に手放す気なんてありません。』

そう、手放す気なんてこれっぽっちもない。
彼女を誰にも渡さない。