彼は魅惑のバレリーノ


「一華さん、大丈夫? 飲み過ぎだよ。」

柊くんが私の顔を覗きこむ。

「平気だよー。なんでいるのおー? 夢?」

「違うよ。心配で迎えに来たんだ。
それより……だれ、この人。」

柊くんの視線が、私の腕を掴んでいる“鬼”に向く。
その目が鋭くひかる。

「んー?」

酔ってるせいで、説明する気力がない。

「あの、手離してもらえます?」

柊くんが低い声で言う。
普段の柔らかさとは違う、静かな圧があった。

「そっちこそ、誰だよ。」

“鬼”がガンを飛ばす。
これだから…ガラ悪い。
なんでこんな奴がモテるんだろう。意味わかんない。

「あ、この人はねぇー。」

説明しようとした瞬間、柊くんが困ったように笑いながら、
そっと私の肩を引き寄せた。

「戸神 柊です。
一華さんの彼氏です。」

「は?」

“鬼”が目をまんまるにする。
その顔があまりにも素で、ちょっと笑いそうになる。

「え? なに弱みでも握られてるの?
こんな綺麗な美青年が、王子みたいなやつが、こいつを?
うそだろ?」

……失礼すぎる。

「本当ですよ。」

深山が静かに口を開く。
その落ち着いた声が、妙に説得力を持って響いた。