彼は魅惑のバレリーノ


私の隣で、柊くんがそっと手を伸ばし指を絡める。

「……大丈夫?」

その声は、
さっき天音さんに向けたものとは違う、
私にだけ向ける特別な優しさだった。


「うん。」

帰りながら歩く。

「何話してたの?」

「んー、恋バナ?」

「まさか。」

「内緒。」

「ふーん。」

絡まる手があったかい。
指先が触れるたび、胸の奥がじんわり温まる。

「あ、夕飯もう食べた?」

「まだ。作ってある。」

「ほんとー!今日はなに?」

「モッツァレラとトマトのハンバーグだよ。」

「うわ、絶対おいしいやつ!」

柊くんが、ふっと笑う。
その横顔が街灯に照らされて、やけに優しく見えた。

「一華さん、チーズ好きだよね。」

「うん。とろーってなるやつ。」

「じゃあ帰ったら温め直すね。
あ、ソースもちゃんと作ったから。」

「え、ソースも?すご。」

ふと真剣な表情で声が低くなる。

「今度から連絡ちゃんとしてね。」

「…ごめん。」

「本当、心配した。」

歩きながら言うその声は、怒ってるわけじゃない。
むしろ、胸の奥からこぼれた“本音”みたいに静かだった。

「うん。ありがとう。迎えにきてくれて。」

「うん。」

繋いだ手を、柊くんが少しだけ強く握る。
近くに停めてあった車に乗り込み家に帰った。