彼は魅惑のバレリーノ


「でも、天音さんも……
すごく、すごく素敵でした。」

その言葉に、天音さんの目がわずかに揺れた。
怒りでも嫉妬でもなく、
“ずっと誰にも言われなかった言葉を受け止めきれない”
そんな表情。

私は続ける。

「まるで——オコジョみたいでした。」

言った瞬間。

「は? オコジョ? バカにしてるの?」

ガタン、と椅子が鳴るほど勢いよく立ち上がる天音さん。

「あれ、オコジョ知りません?」

「知ってるわよ。
でも……どんなんだっけ?」

その“どんなんだっけ”が妙に素直で、
私は思わずスケッチブックを取り出し、
鉛筆でサラッと描く。

「こんな感じです。」

天音さんは覗き込み、ぽつり。

「上手いわね。」

「ありがとうございます。」

「じゃなくて、なんなの!
結局バカにしてるの?」

私は首を横に振る。