彼は魅惑のバレリーノ

「私…この前、初めてバレエの体験レッスンしたんですよ。」

「は?」

天音さんの眉がぴくりと動く。

「手にも足にも気を遣って、
息止めないと身体がブレちゃって……
もうほんと、つらかったです。」

自分でも笑ってしまうほど正直に言うと、
天音さんは一瞬だけ言葉を失ったように黙った。

私はスッと息を吸い、
胸の奥にある気持ちをそのまま言葉にする。

「天音さんと柊くんの踊る姿、
本当に綺麗でした。
背景に海が見えて……
愛しさも、切なさも全部そこにあって。」

あの練習の光景が脳裏に浮かぶ。
二人の呼吸が重なって、
世界が二人だけになっていた瞬間。

「優雅に踊ってる裏に、
見えない努力があるって……
体験してみて、やっと分かりました。」

天音さんの肩が、ほんの少しだけ揺れる。

「本当にすごいです。
血の滲むような努力も、食事管理も、
たくさんしてきたんだって思います。」

私はまっすぐ天音さんを見る。

「そんなすごい人の隣に立つって、
相当なプレッシャーですよね。」

天音さんの指先が、ぎゅっと握られる。