彼は魅惑のバレリーノ

パンフレットもグッズも順調に進み、
アパートの荷物も片付け終わった。

んー、朝。
……いや、もう昼か。

昨日は最終確認で遅くまで仕事していたから仕方ない。

柊くんは練習室かな。
毎日練習して、公演の準備もして。
それとは別で海外の人と打ち合わせして、
英語ペラペラで、さらには振り付けの仕事までこなして……。
売れっ子プロバレエダンサーって本当にすごい。

ぐーっと伸びをして、顔を洗う。

目をこすりながらパジャマのまま階下へ降りていくと——

「おはよー。」

「あ、一華さんおはよう。
よく寝てたね。」

「うん…仕事遅くまでしてたから。」

「そうだね。頑張ってたもんね。
何か飲む?」

ふっと優しく笑う。

「ココアがいい。」

「了解、
ちょっと待ってて。」

そう言って視線が向いた先をみると。


「なんで貴女が……。」

「え?」

ぱちくりと目を瞬く。

そこに立っていたのは、天音さんだった。
綺麗に巻かれた髪、上品なワンピース。
完璧に整った姿。

……対して私は寝起きパジャマ。

空気が一瞬、ぴんと張りつめる。

天音さんの視線が、私と柊くんの距離を一度だけなぞる。
その目は驚きとも、戸惑いともつかない色をしていた。