彼は魅惑のバレリーノ

二人で朝食を食べ終えて、食器を片付けたあと。

「柊くん、仕事のことでいい?」

「ん、いいよ。」

彼がソファに腰を下ろすのを見て、隣に座りながらパソコンを開く。

「パンフレットのデザイン画なんだけど…これね。」

画面には、海賊のアルトと海の女神が寄り添うイラスト。
光の入り方や表情の角度が、静かな緊張を含んでいる。

「いいね。すごく。」

「ほんと?」

「うん。結ばれない切なさと愛しさがでてるよ。
この表情とか、手や足の繊細さ。
それをここまで表現できるの、すごいよ。」

褒められて、胸の奥がじんわり温かくなる。

「あ、ありがとう。でもなんで観劇ってさ、悲しい結末が多いのかな? 白鳥の湖とかさ。」

「うーん…。
“非日常の美”とか“人の情動”を極限まで見せるためかな。
悲劇って、美しさが際立つし、観客に強い感動と衝撃を残す。
…結ばれない二人の運命って、どうしても盛り上がるんだよね。」

「せ、切ないね。」

ぽつりとこぼした声に、彼が横目でこちらを見る。
その視線がやわらかくて、胸が少しだけ締めつけられる。