彼は魅惑のバレリーノ


さらにキスしょうとする、柊くんに、

「待って待って!」

思わず後ずさるように言うと、
柊くんはぴたりと動きを止めて、
少し首を傾げた。

「なに?」

その顔が近い。
近すぎて、呼吸が乱れる。

「随分グイグイくるね。
そんな綺麗な顔近づけられるとドキドキして大変なんだけど!」

こんな綺麗な顔がこんな間近にあったら、心臓もたない。


「…はは。
そのうち慣れるよ。」

軽く笑う声が耳に触れて、
また心臓が跳ねる。

「な、なれないよ。」

そう返すと、
柊くんは一瞬だけ目を細めて、
ゆっくりと距離を詰めてきた。

ソファのクッションが沈んで、
逃げ場がなくなる。

「じゃあ慣れるまで…。」

指先がそっと私の手に触れる。
触れた瞬間、全身が熱くなる。

「もっと欲張っていい?」

低くて甘い声。
耳の奥に落ちて、身体が震える。

「……よ、欲張るって…なにを…?」

かろうじて絞り出した声に、
柊くんはゆっくりと微笑んだ。

「こういうの。」

そう言って、
私の顎をそっと指で持ち上げる。

逃げられない。
視線が絡む。

「一華さんのこと、
もっと近くで感じたいってこと。」

囁くように言いながら、
彼の顔がまた近づいてくる。

唇が触れる距離。
あと数センチ。

「……ダメ?」

その一言が甘すぎて、
胸がぎゅっと締めつけられる。

「……ダメじゃない…」

そう答えた瞬間、
柊くんの表情がふっと緩んだ。

「よかった。」

そして——
今度は迷いなく、
そっと唇が重ねられた。

甘くて、優しくて、
息が溶けてしまいそうなキス。