彼は魅惑のバレリーノ

「お気に入りの雑貨屋。
誰にも教えたことなかったのに、
会って三週間の一華さんにはじめて教えたんだ。」

「え?」

「そしたらさ、ユキヒョウに似てるって言ったじゃん。
跳躍力がすごいって。
あれ、嬉しすぎたよね」

その時のことを思い出したのか、
柊くんは照れたように鼻先をかいた。

「本当はもっと長く一緒にいたかったけど、
まだ知り合って間もなかったから、さすがに自粛したけど。」

「し、知らなかった…」

「でしょ?
余裕ある大人に見せたかったからね。」

ふっと笑うその表情が、
あまりに優しくて胸が温かくなる。

「一華さんには年下で頼りないなんて思われたくなくて、
カッコつけてる。」

「だからいつもかっこいいんだ。」

「なら思惑通りだ。」

イタズラに笑う彼にドキッとする。
すぐ真剣な顔をする。
小首を傾げて、さらりと淡い茶色の髪の毛が揺れる。

「……ねぇ、一華さん。もう一回いうけど。
俺の彼女になってくれる?」

名前を呼ぶ声が、さっきより低くて、甘くて、
心の奥をそっと撫でられたみたいに震える。

あーもう。
好きだな、この声。

「うん、お願いします。」

言った瞬間、胸がじんっと熱くなる。

「やった。」

いつもの大人びた顔ではなく、花が咲くみたいに無邪気に笑う柊くん。
その笑顔が可愛くて、愛おしくて、
胸の奥がぎゅっとなる。

こんな顔、私だけが見ていいの?

「本当に夢ではないんだよね?」

思わずこぼれた呟きに、
柊くんはゆっくりと身を寄せてきた。

距離が近い。
息が触れそう。

「夢じゃないよ。」

そう言って、私の手をそっと包む。
指先が触れただけで、全身が熱くなる。

「ほら、ちゃんと触れてるでしょ。」

その声が優しくて、
胸の奥がとろけそうになる。