彼は魅惑のバレリーノ

「だからモデル引き受けてくれたの?」

「そう。あと、知りたくなった。
一華さんの見る世界を。」

「へ、へぇー…」

胸の奥がじんわり熱くなる。
そんな私を見て、柊くんは少し照れたように笑った。

「それから、一華さんが俺をモデルとして見る目が印象的で。」

「え?」

「俺を見てるようで見てないというか…
その先を見てるというか…
なんて言うんかな?」

言葉を探すように、
柊くんは指先でソファの縁を軽く叩く。

「いままで俺を見て褒めてくれる人はたくさんいてさ。
綺麗だ、素敵だ、かっこいいって。」

「それはそれは。」

「でも、一華さんだけは違った。
俺を見て“蝶みたい”って。」

その瞬間、彼の目がふっと柔らかくなる。

「俺が表現したい本当のところも見えてるのかなって思ったら、どんどん気になっていったんだ。」

「そ、そうなんだ。」

「うん。
あと、そうだな。美術館に誘ってくれたでしょ?」

「うん。」

「あの時、絵を見る一華さんが綺麗で。
俺は絵より一華さんのこと見てた。」

「え?」

「気づかなかったでしょ?」

ニヤリと笑うその顔が、
少し意地悪で、でも優しくて、
心臓が跳ねる。

「そこからかな。興味が好意に変わったの。」

「は、はずかしい…」

頬が熱くなるのを隠すように、
カップを両手で包む。