彼は魅惑のバレリーノ


「好きになってよ。
もっと、俺を見て。」

「え?」

思わず顔を上げると、
柊くんは耳まで赤くして、
でも嬉しそうに微笑んでいた。

「俺……一華さんのこと好きだよ。
だから俺の彼女になって。」

「え?」

「そばにいてよ。
出ていくなんて言わないで。」

「え?」

「さっきからそれしか言ってないじゃん。」

ふっと笑う声が、
胸の奥をくすぐる。

「ゆ、夢?」

「なら試してみる?」

「え?」

その瞬間、
唇がほんのり触れた。

触れた、というより
“確認するように”そっと置かれたキス。

「ちょっと!」

「ダメだった?」

「だ……だめではないけど。」

「ならいいじゃん。
ねぇ、返事聞かせてよ。」

「わ、私でいいの?」

「俺は一華さんがいい。」

迷いのない声。
まっすぐすぎて、胸が苦しくなる。

「わ、わかんない……」

「うーん……じゃあ、とりあえず続きはソファに座って話そう。紅茶入れる。」

そう言って、
柊くんは私の手をそっと握り、
引いていく。

その手はあたたかくて、
離す気なんてまったくないみたいに、
しっかりと。