彼は魅惑のバレリーノ

「あの…どうしてもモデル、ダメですか?」

これが最後のチャンスだ。
これでダメなら、本当に諦める。
そう覚悟して、私は戸神さんを見つめた。

彼は、しばらく黙って私の顔を見ていた。
その沈黙がやけに長く感じる。

「……いいよ。」

「そうですよね、ごめんなさい。
じゃなくて! いいんですか!?」

思わず声が裏返った。
聞き間違いかと思って、慌てて確認する。

「うん。ただし条件がある。」

「も、もちろんです!!」

即答した。
条件が何だろうと、今はそれどころじゃない。

戸神さんは軽くため息をつき、顎で家のほうを示した。

「とりあえず中入りな。」

「ありがとうございます!」

私は全力で頭を下げた。
勢いよく下げすぎて、前髪がばさっと落ちる。

顔を上げると、戸神さんは少しだけ呆れたように、でもどこか諦めたように私を見ていた。

その視線に、胸がじんわり熱くなる。