「今回の公演の演目は……海賊の話。
そこの椅子に座ってみてて。」
「ありがとう。」
案内された椅子に腰を下ろすと、
柊くんはすっと前に出て、声を張った。
「みんな集まって。」
その一言で、
さっきまで自由に動いていたダンサーたちが
一斉に集まってくる。
空気が変わる。
緩やかだったスタジオが、
一瞬で緊張に包まれた。
「この方が新しくパンフレットとグッズのデザインしてくれる如月さん。
イメージしやすいように、第一部通してやるから。」
「よろしくお願いします。」
立ち上がって頭を下げると、
一斉に向けられる視線が刺さるように熱い。
(うわ……プロの目だ……)
背筋が伸びる。
ダンサーたちはすぐに配置につき、
鏡の前で呼吸を整え始めた。
私は慌ててバッグからスケッチブックを取り出す。
ページを開いた瞬間、
スタジオの空気がさらに張り詰める。
音楽が流れ始める。
そして――
柊くんが動いた。
家で見せる優しい笑顔とは違う。
舞台の上の“彼”がそこにいた。

