「如月さんがいう柊って…同一人物か?
俺の知らないやつみたいだよ。」
「え?」
矢野さんが肩をすくめる。
「いや。あいつとはさ、付き合い長くて家にも入れてもらったことないし、
ましてやご飯だって作ってもらったことない。
挙句……前の彼女と付き合ってたときも一緒に住んでなかったぞ?
だから人を自分のテリトリーに入れないやつだと思ったんだけど……」
「それって……」
(どういう……意味?)
胸がざわつく。
その瞬間。
「将暉。
一華さんに絡まないで。」
低くて、でも優しい声。
「あ、噂をすれば。じゃあまた。」
矢野さんはひらひら手を振って去っていった。
空気が一気に静かになる。
柊くんがこちらを向いて、
ふっと柔らかく笑った。
「来てくれてありがとう。」
「いえ……」
「将暉になにか言われた?」
「いや……
あの、ごめん。同居させてもらってること言っちゃった。」
「あー、全然いいよ。
あいつ、口上手いでしょ?」
「うん……まんまと口が滑った。」
「ふふ、しょうがないね。」
その笑顔が、
スタジオの照明よりずっと眩しい。
(……かっこいい)
胸がぎゅっとなる。
“テリトリーに入れないやつ”
“前の彼女とも住んでなかった”
じゃあ、私は――
どうしてここにいるんだろう。
どうして、こんなに優しくしてくれるのだろう。
答えはまだわからないけど、
彼の笑顔を見るだけで、
心がまた跳ねた。

