彼は魅惑のバレリーノ

そして翌日。
午前中の仕事を終え、教えてもらった住所に向かった。

扉を開けた瞬間、空気が変わる。

広いスタジオ。
鏡張りの壁。
床を踏む音、呼吸、ストレッチの軋み。

バレエダンサーたちの日常がそこにあった。
それぞれが自分の身体と向き合い、
動きを確認したり、柔軟をしたり、
まるで舞台裏の鼓動がそのまま流れているようだった。

圧倒されて立ち尽くしていると――

「あれ、どうしました?」

明るい声がして振り向く。

爽やかな笑顔の青年が立っていた。
肩幅が広く、しなやかな筋肉が服の上からでもわかる。

「初めまして。如月と申します。
今回パンフレットとグッズのデザインをさせていただくものになります。」

慌てて名刺を差し出す。

「わざわざどうも。
俺は矢野 将暉っていいます! よろしく。」

快活な笑顔と、鍛えられた身体。
“ダンサー”という言葉がそのまま形になったような人だった。

「お願いします。」

軽く頭を下げると、矢野さんはにこっと笑った。