彼は魅惑のバレリーノ


部長に連絡すると、すぐに返信がきた。

仕事だから有給じゃなくていいぞ。
半日仕事して午後見学したら、そのまま直帰でいいとのこと。

(……さすが、良い人)

私はそのまま柊くんに伝える。

「休みにしなくてもいいって。」

「良い上司だね。」

「うん。あの人ああ見えて、娘さん三人もいるの。
デレデレなんだって。」

「なんかそれいいね。」

ふふっと二人で笑い合う。

その笑い声が、部屋の空気を柔らかくしていく。

名前のない関係。
恋人でも、家族でも、ただの同居人でもない。

でも――
居心地がよくて、甘えたくなる。

距離が近いのに、まだ踏み込めない。
踏み込んだら戻れない気がして怖い。

それでも、こうして隣にいる時間が
たまらなく好きだ。

柊くんは、何も知らない顔でハーブミルクを飲んでいる。
その横顔を見ているだけで、胸がじんわり熱くなった。