彼は魅惑のバレリーノ


「ご馳走様でした。」

「お粗末様でした。」

食器を洗い終え、
「先にお風呂入ってきていいよ」と言われてお風呂を借りたあと。

脱衣所から出ると、
ソファに座った柊くんが、ひょいひょいと手招きしてくる。

「はい、一華さん。座って。」

「自分でできるよ。」

「いいじゃん。俺がやりたいの。」

もう、これが恒例になりつつある。
ドライヤーを持って、私の髪を丁寧に乾かしてくれる。

温かい風と、
指先が髪をすくう感触と、
近い距離。

胸が落ち着かない。

(この関係、いつまで続くんだろう)

好きと言ってしまったら、
きっと壊れてしまう気がする。

でも、言わないままでも、
この距離はずっと続くわけじゃない。

“何と呼べばいいの、この関係”

そんなことを考えていたら――

「はい、おわり。」

「ありがとう。」

「俺もお風呂入ってくる。」

そう言って脱衣所に入っていく背中を見送り、
扉が閉まった瞬間、私は大きく息を吐いた。

「……はぁ……」

胸の奥がじんわり熱い。
苦しいのに、幸せで。
幸せなのに、怖い。

好きって、こういうことなんだ。