彼は魅惑のバレリーノ

「マリアさんっていうの?
名前まで美人な猫さんだね」

ロシアンブルーは誇らしげに尻尾を揺らした。

そのとき、戸神さんがスケッチブックを指さした。

「ねぇ、それ貴女が描いたの?」

「あ、はい。そうです。」

「見せて。」

「いいですけど…。」

差し出すと、戸神さんの長い、しなやかな指がスケッチブックを受け取った。
その手つきが妙に丁寧で、思わず息をのむ。

ページを開いた彼は、しばらく黙ったまま見つめていた。

「……すごいな。」

低くつぶやく声。
まじまじと絵を追う横顔は、冷たさよりもずっと静かで、真剣だった。

長いまつ毛が伏せられ、影が頬に落ちる。
その横顔があまりに綺麗で、私は思わず固まってしまった。

マリアさんが足元で「にゃあ」と鳴く。
まるで「ほら、ちゃんと見てあげなさいよ」と言っているみたいだった。