扉の向こうの王子様~終電帰りの限界社畜OL、玄関のドアを開けたら異世界と繋がっていました

 祝祭週間が終わり、王宮に勤めている全ての者に、三日間の特別公休が与えられる。
 同時に全員が休むことは当然叶わない為、年内までに消化する事が義務付けられている。

 凛子は祝祭週間後の、連続した三日間の公休を、急遽申請していた。
 異動辞令もある為、この申請はすんなり通っている。引っ越しの手伝いを申し出てくれたエイゼルは凛子の休みの最終日のみ申請が通った為、その日に軍官舎へと引っ越す事になった。
 
 シータ家別邸で貸してもらっていた部屋の中を二日間で片付けると、ここで暮らした半年近くで、荷物はそれなりの量になっていた。衣装箱が二つ。小物類の箱が三つ。

 図書院から借りた本は暫く読めなそうだ。と古めかしい木箱は、持っていかないものに分類した。明日にでも返却しておこう。折角馴染み始めた官服は、もう着る事もないのだろうか、と思いつつも、再度ラストゥーリャの元に戻れるならば……という思いから、お守り替わりに春夏物用の衣装箱の底に仕舞った。

 軍規によると、勤務形態は基本的に三勤一休。夜勤も有る。しかし上司付きの秘書ともなれば、その上司の勤務形態に、必然的に合わせる事になるだろう。今の所、凛子の休みは読めない。

「ブラック企業臭がしないでもない……」

 声に出して言うと、更に暗澹たる気持ちになる。
 そして、急ごしらえで届けられた軍服に視線を転じた。

 群青色をした、光沢が抑えられている布地でできた詰襟の上衣は腰よりやや長く、革のベルトで締める。
 下は女性用だからなのか、ひざ下のタイト風なスカート。
 それに軍靴である編み上げブーツを履く。
 タイツの色に指定は無い。

 あちらの世界とこちらの世界ではやはり事情が違う為、元単身者向けマンション住まいだったにも関わらず、集合住宅に入居するのに抵抗があったのも事実。男だらけの軍官舎……想像するに、なんとなく耐えない。

 だが、エイゼルによって齎された追加情報に寄ると、現在、軍官舎には凛子を抜かして合計三名の女性が入居しているらしい。うち二人は官舎内の管理などを任されているいわば寮母的存在。残るもう一人は立派な騎士だそうだ。

 十年前より近衛騎士をはじめとした国内の騎士団への入隊に、性別に寄る制限がかからなくなった。だからといって、多くの女性騎士がいるわけでは無いのだが、それでも近衛に二名。軍本部に四名。各支部にもおおよそ九対一以下の割合だが、女性も所属している。

 凛子に割り当てられたのは、王宮の西壁外に位置している軍官舎の二階部分である。いわゆる女性専用階だと告げられて、内心ほっとした。