
<冬、とある山村>
愛祈琉
「修児くん、久しぶり。元気にしてた?」
ここは母の実家の山村。
私、深山 愛祈琉は、家の裏手に広がる雪原の真ん中で立ち止まった。
愛祈琉
「修児くん…私、音楽活動を辞めちゃったの。あんなに応援してくれたのにごめんね。」
誰もいない雪原に話しかけてみても、私の声は白いじゅうたんに溶けていく。
淡雪が積もる音、風の音、木々がざわめく音が「見える」だけ。
愛祈琉
「私、音楽活動が苦しくなって初めて気づいたんだ。私が歌いたいステージは大きなライブハウスじゃない。こうして雪の音を見ながら、修児くんのために歌いたかったの。それじゃあ始めるね。」
大学生シンガーソングライター・Airuの、たった1人に捧げるラストライブを。



