背後と眼前


「……そういえば、幸花そんな人形つけてたっけ?」

金に近い茶髪を揺らして、幼馴染の有都が言った。
有都が指差したのは、叔母に貰った人形。
私がチャーム部分をつまみ有都に見せると、有都は目を丸くした。
「え、なに?この人形がどうしたの?」
「知らねえの?―――ブードゥー人形だろ、それ」
「ブードゥー人形って……?」

私が聞くと有都は、少し躊躇うようにしたあと口を開いた。
「ブードゥー教で使われる、呪いの人形だよ」
「呪い……」
愛らしい人形とはかけ離れた言葉。

「叔母さん、なんでこんなのくれたんだろう」
「さあ?……でも、不吉だよな」
「うん……」
こくりと頷いた。有都は少し微笑む。
「なんかあったらちゃんと言えよ?」
少しドキリとし、思わず俯いた。

その日から、身の回りに、悪い事が始まっていった。

靴紐が切れたり、教科書がボロボロになったり……。
怖くて泣きそうになる私を、有都は抱きしめた。
「……幸花、俺がついてるから」

家に帰ると靴が一足多くて、誰かがいると分かった。
「ただいまー」
そう言って、私がリビングを覗くと。

「あら幸花ちゃん。久しぶりね」
「あっ、叔母さん。お久しぶりです!」
私が頭を下げると、叔母は、私のカバンを見て口角を上げた。

「あら、私があげた人形、つけてくれてるの」
叔母の言葉に、私は固まってしまう。

「……叔母さん、これが呪いの人形だって知ってますか?」
「呪い……?幸花ちゃん、勘違いしちゃ駄目よ。これは、癒しの人形なのよ」
「え……でも悪い事がいっぱい起きて……」
「それは、人形のせいじゃないわ」
叔母は、嘘をついているようには見えなかった。
ということは―――。

次の日学校で、私は有都に声をかけた。
「有都……私って、なんで酷い目に遭ってるんだろう」
「ブードゥー人形の呪いじゃないのか?」

「嘘つき。私に悪戯してるの―――有都なんでしょ!?」

勢いのまま言ってしまった私に、彼……有都は笑いかけた。
「幸花が俺を好きにならないのが悪いんだよ。俺らは結ばれる運命なのにさ」
恥ずかしげもなく言う有都に、体が震えた。
怖いどころじゃなくて、……気持ち悪い。