呪いの人形

「バカ! なんで学校に来てんだよっ! キモいから帰れよ!」

 下校途中にある公園で、五人のクラスメートが僕を殴ったり蹴ったりしてくる。
 やり返したり文句を言えばもっと殴られるから、僕はじっと丸まって耐えるしかなかった。

 そのうち飽きた五人は笑いながら走っていなくなった。
 僕は口に入った砂を吐き出しつつ立ち上がり、背後からの視線に気づく。

 ブランコに座る怪しいおじさんが、ニヤニヤして僕を眺めていた。
 おじさんはブランコを元気よく漕ぎながら挨拶してくる。

「どうも、こんにちは」

「こ、こんにちは」

「何かお困りのようだね。たとえばそう……イジメとか?」

「えっ、どうしてわかったんですか」

「おじさんは心が読めるのさ」

 自信満々に言ったおじさんは、ぴょんとブランコから飛び降りた。
 それから五つの小さな人形を僕に差し出す。

「さて、君にこれをプレゼントしよう。呪いの人形だよ」

「呪い!?」

「人形を持って相手のことを恨むだけで感覚がリンクする。いじめっ子は何人かな。足りなければ追加で渡しておくが」

「ちょ、ちょうど五人です」

「なるほど、それはよかった。この人形が君の悩みを解決してくれる。大切に使いなさい」

 おじさんは僕に人形を押し付けると、さっさと立ち去ってしまった。
 帰宅した僕は、自分の部屋で呪いの人形を見つめる。

(あいつらのことを恨むだけでいいって……)

 次の瞬間、人形がぼんやりと光った。
 驚いた僕はしばらく固まっていたが、我に返って人形を殴る。

「この野郎っ!」

 吹っ飛んだ人形を何度も踏みつける。
 人形が裂けて綿がはみ出していた。

「いつもいつも! 僕のことをいじめやがって! ふざけんな!」

 ひとしきり人形を痛め付けた後、僕は裁縫セットを見て閃く。
 人形を丸めながら縫い合わせて、五つを一つに合体させてみた。
 ブサイクな人形を前に僕は笑う。

「ざまあみろ。いじめなんてするからこうなるんだ」

 翌朝のニュースで、五人のいじめっ子が死んだことを知った。
 後になって広まった噂によると、肉団子のように潰れた状態で、互いに縫い合わせられた形で見つかったらしい。
 僕は人形をくれたおじさんを探したけど、二度と再会することはなかった。







 お礼が言いたかったのに。