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放課後。教室から校庭を眺めながら時間を潰していると、高橋くんからメッセージが届いた。
『部活終わった。十分後に昇降口に行けるよ』
『待ってるね』
口元をゆるめながら返事を打っていると、そばに誰かの気配を感じるような気がする。
振り向いてみたけど誰もいなくて、なんだか変な感じだった。
朝に感じた、妙な違和感にちょっとだけ似ている。
そこにあったはずのなにかを忘れてしまっているような。そんな感じ。
でも、考えてみてもなにを忘れているのかわからない。
言葉にできない気持ち悪さを抱えたまま、開けていた窓の鍵をかけて、教室を出る。
昇降口に着いたのは、わたしのほうが先だった。
廊下の掛け時計を見ると、時刻は四時四十三分。
そのまま高橋くんのことを待っていると、一年生の女子が二年生の下駄箱の前をうろうろとしているに気が付いた。
他のクラスだけど、顔は見たことのある子だ。
思いつめたような顔をした彼女の手には、ビニール製のショッピングバッグが握られている。
ときどき立ち止まって、手元に視線を落としてため息をついている彼女は、二年生の先輩になにか渡したいものでもあるらしい。
しばらく気になって見ていると、わたしの横をふっと冷たい空気がすり抜けていった。
この感覚を知ってる。そう思うのに、それが何なのかはわからない。
考えていると、いつのまにか下駄箱の前をうろついていた彼女の手からショッピングバッグが消えていた。
顔をあげた彼女が、空中を見つめて驚いたように目を見開いている。
その姿を見て、一瞬なにかを思い出しそうになった。



