「紗良ちゃん、そろそろ行かないと。高橋くんが昇降口で待ってるんじゃない? 一緒に帰るんでしょ。デートみたいでドキドキだね」
わたしがなかなか教室を立ち去れずにいると、黒板の上の掛け時計に視線を向けたユーコが話をはぐらかす。
高橋くんが教室を出て行ってから、十五分は経っている。ユーコの言うとおり、もう昇降口にいるかもしれない。
高橋くんとの約束を破るわけにはいかないけど、このままユーコと別れるのも良くないような気がした。
理屈とかじゃなくて、直感で。
「ユーコ」
「ん?」
不思議そうに首を傾げた半透明のユーコの体が、夕暮れ色に染まる教室の中にぼんやりと溶けている。
「わたし、四時四十四分のおまじないのことなんて何も知らなかったけど……。ユーコに出会えてよかったよ」
「紗良ちゃん……」
「ユーコはちょっとあざとくて、ユーレイなくせにいつも堂々としてて、厳しいことも言うけどほんとうは優しくて。わたしにしか見えないのがもったいないくらい可愛くて。これからも一緒にいてほしいって思う、大事な友達。だから、明日はわたしと高橋くんののろけ話をちゃんと聞いてね」
にこっと笑いかけたわたしに、ユーコがなんだか泣きそうな笑顔を返してくれた。



