わたしのほうこそ、自分のメッセージが高橋くんを気持ち悪がらせたかと思ったし、迷惑がられていると思っていたから……。
だけど、そういうのは全部、わたしのネガティブな思い込みだったのかも。
心臓の音を高鳴らせていると、高橋くんが顔を上げて小さく首を横に傾げた。
「おれ、ひとつ武部さんに確かめたかったことがあるんだけど。聞いてもいい?」
「うん」
「バレンタインデーの日に、おれの机にクッキーを入れてくれたのって、武部さん?」
高橋くんからの質問に、心臓がひっくり返りそうになった。
「ど、どうして?」
じつを言うと、バレンタインデーの日に机に入れたクッキーには、差出人である自分の名前は添えていない。
ただ「高橋くんへ」と宛名だけ書いて入れておいたのに、どうしてバレたんだろう。
動揺を隠しきれずに言葉を詰まらせると、高橋くんが「やっぱり」とつぶやいた。
「メモに書いてあったおれの名前、字がすごくきれいだったから。もしかしたら武部さんかなって、ずっと気になってた」
「え?」
「もっというと、一学期の初め頃に消しゴムのお礼でわざわざクッキーまで作ってくれてたときから、いい子だなって気になってた」
「え……?」
びっくりしすぎて目を見開くわたしを見て、高橋くんが照れ臭そうに目を伏せる。
「でも武部さんって落ち着いてて男子とはあんまり話さない感じじゃん? 消しゴムのお礼のクッキーも、バレンタインデーのクッキーも、直接じゃなくて机の中にこっそり入れられてたし。おれから話しかけたら嫌がられるかなーって思ったら、なかなか声をかけるきっかけがなくて。だから、教科書見せてくれたときは嬉しかったよ。ぶつかってケガさせたことは申し訳ないなって思ってたけど、ノートのことで話せるようになったのも嬉しかった。武部さんのほうから連絡先交換しようって言ってくれたときも、すげーラッキーって思ったよ。しかも、武部さんのほうから二年でも同じクラスになりたいって言ってもらえて、これは絶対ワンチャンあるんじゃねーのって思っちゃった。調子乗ってるよね」
首の横を撫でながら、高橋くんがいつより少し早口で話す。
ときどき照れ隠しみたいに笑ってうつむく彼の耳が赤い。
高橋くんの声は、ずっとわたしの頭をぼーっとさせていた。



