「武部さん、待たせてごめん」
「あ、うん……」
決意は固めたはず。それなのに、高橋くんの顔を見た途端、頭の中が真っ白になって、ドクンドクンと心臓の音が速くなる。
声を出せずに唇を震わせていると、高橋くんが教室の中に入ってきた。少しずつ詰まる距離に、極限まで高鳴った心臓がせりあがってくる。
やっぱり、借りていたジャージだけ返して逃げてしまおうか。
弱気になりかけていると、わたしの後ろに回ったユーコがそっと背中を押してくれた。
ひやっとした冷気に弾かれるように一歩前に出たわたしの耳に「きっと、大丈夫」とユーコの声が届く。
ユーコってば、また根拠のないことを……。
そう思ったけど、背中を押されて少し緊張がほぐれた。
ユーコが現れてから、いろんなことがたくさん起きた。
ユーコがいなかったら、バレンタインデーの告白に失敗した時点で、高橋くんへの想いは諦めていたと思う。
悔いのないようにちゃんと告白しようと思えたのは、ユーコがわたしのことを応援してくれたから。
あとは、わたしが少しの勇気を出すだけだ。



