今までだったら。
というより、バレンタインデーの日にユーコに出会わなかったら、わたしは高橋くんへの気持ちを諦めてしまっていたかもしれない。
高橋くんみたいな人気者を好きになっても、どうせ想いは伝わらない。
高橋くんには、クラスの中心グループにいる前田さんみたいな女の子が似合うんだ、って。
思い込んで、決めつけて。自分から行動を起こそうって考えることすらしなかった。
悩みに悩みまくって、ノートの横に置いたスマホにあらためて手を伸ばす。
それから、ゆっくりスマホで文字を打った。
『武部です。数学のノートでわからないところがあるので聞いていいですか?』
だったそれだけ入れるだけで、スマホを持つ指先がめちゃくちゃ震えた。
送信ボタンを押すときは心臓がバクバクして、やっぱりやめておこうかとためらう気持ちが沸いた。
最終的には、ぐっと目を閉じて、ほとんど勢いで送信ボタンをタップする。
ついに、送っちゃった……。
ドキドキしながら薄っすらと目を開くと、送信して五分も経たないうちに既読が付いた。
『いいよー』
既読が付いてからすぐに、割とあっさりした返事がきた。
すぐに気付いてくれたことが嬉しかったし、返事がきたことにもほっとする。



