わたしの秘密のキューピット


「何の話?」 

「小春から聞いた四時四十四分のキューピットのウワサだよ。夕方の四時四十四分に、誰にも見られないように好きな人の机やロッカーにラブレターを入れると、恋のキューピットが現れて好きな人と両想いにしてくれる。だけど、その代わりに、キューピットになにかひとつだけ自分の大切なものを渡さないといけない。その大切なものは魂なんじゃないか、って小春が言ってた。今みたいにわたしの声を操ったりできるってことは、ウワサ通りわたしの命を奪うこともできるんじゃないの?」

 喉を押さえながら一歩後ろに下がると、ユーコがクスクス笑い始めた。

「何言ってるの、紗良ちゃん。高橋くんと両想いになった途端に紗良ちゃんの命を奪うなんて、あたし、そんな非道じゃないよ。初めに言ったでしょ。あたしは、人を呪ったり脅かしたりするタイプのユーレイじゃないって」
「でも、さっきちょっと息苦しくなって……」

 なおも疑いの目を向けるわたしのことを、ユーコがおかしそうにクスクス笑う。

「ちょっと考えてみてよ。あたしは今まで、この学校で93人の片想いをかなえてきたんだよ。だとしたら、93人の子が何らかのカタチで行方不明になってたり命を落としてたりしないといけないはずなのに、今までにこの学校でそんな事件があった?」
「ない、と思う……」
「そうでしょ。両想いになったらその代償に命を奪われるなんて……そのウワサがどこから出てきたのかはわからないけど、心配しなくても大丈夫」
「ほんとうに?」
「ほんとうに」

 にこっと笑うユーコが、ウソをついているようには思えない。