「よかったね、紗良ちゃん。これでケガが治るまでは毎日高橋くんと話せるね」
高橋くんの姿が見えなくなると、ユーコがわたしの肩をぽんぽんっと叩きながらそう言った。
「よかったね、じゃないよ。さっき、ユーコがなにかしたでしょ?」
「なにかって?」
可愛く首を傾げてとぼけているが、ユーコの口角はいたずらっぽくつり上がっている。
「ノートのこと断ろうとしたとき、急にうまく声が出なくなったの。それで、わたしの意志と関係なく声が出て……」
「そうなんだ? でも、ケガが治るまでって頼んだのは紗良ちゃんでしょ?」
「だから、ユーコがなにかして……ねえ、あれ、呪いみたいなやつじゃないよね?」
「まさか」
目をパチクリとさせるユーコに、疑いのまなざしを向ける。
ユーコは可愛いし、邪気も全く感じられない。
これまで特に悪さをされることもなかったからすっかり気を抜いていたけど、いちおうユーレイなんだよね。
それに四時四十四分のキューピットの怖いウワサだって、決して忘れたわけじゃない。
「『もし恋を叶えてもらったら、その代償に、キューピットになにかひとつだけ自分の大切なものを渡さないといけない』」
低い声でゆっくりとそう言うと、ユーコがきょとんと首を傾げた。



