なんで?
左手を喉にあてると、不意にスーッと何かが体に入っていくような気がして。わたしの意志とは関係なく口が動いた。
「ノート、ケガが治るまで頼んでもいいかな?」
喉の奥から出たのはわたしの声だけど、わたしの言葉じゃない。
びっくりして喉を指で押さえると、ユーコがわたしの真横でニヤリと口角を引き上げている。
今、ユーコが何かした!?
すぐにでも問い詰めたいけど、高橋くんの手前、ユーコを横目にそっと睨むことしかできない。
「あの、……」
「よかった。明日からは、おれが武部さんの代わりにノートとるから。じゃぁ、部活あるから行くね」
喉の息苦しさが消えてすぐに訂正しようとしたら、高橋くんがわたしの言葉を遮ってにこっと笑いかけてきた。
「あ、うん……」
あまりに完璧な笑顔を向けられて、ノートのことを断るタイミングを失ってしまう。
代わりにノートをとるなんて、絶対に手間なはずなのに。笑顔でわたしに手を振って教室を出ていく高橋くんは、なぜか少し嬉しそうだった。



