わたしの秘密のキューピット


 渡せなかったクッキーのことを考えながら、ため息を吐く。

 家庭科部のわたしは、お菓子作りが得意。渡そうと思っていたクッキーは、かなりの自信作だった。

 せっかく渡すなら、少しでも高橋くんに喜んでもらいたい。そう思って、バニラ生地とチョコレートの生地を組み合わせて、サッカーボール型のクッキーを焼いたのだ。

 でも、どんなに自信作でも、渡せなかったら意味がない。

「どうしようかな、これ」

 可愛くラッピングしたクッキーを見つめて、ため息をまたひとつ。

 途方に暮れていると、カバンの中でピロンとスマホが鳴ってメッセージが届いた。同じクラスで仲の良い岸野 小春(きしの こはる)からだ。

『高橋くんに、クッキー渡せた?』

 小春には、わたしが高橋くんのことを好きなことやバレンタインデーで告白を考えていることを話してある。

 もしうまくいったら連絡すると言ってあるから、待ちきれずに連絡してきたんだろう。

『タイミング逃して渡せなかった』
『高橋くんに会えなかったの?』
『部室の近くまでは行った。それで、前田さんが高橋くんにチョコ渡してるところ見ちゃった。前田さんのあとで、渡す勇気ない』

 メッセージで弱音を吐いたら、小春からクマのキャラクターがうるうる泣いているスタンプが返ってくる。

『直接が無理だったなら、せめて机にでもクッキー入れて帰ってきたら? 気付いてくれるかも』

 そっか。机に……。

 わたしは小春に「ありがとう」のスタンプを送ると、教室へと走った。